もくじ
はじめに|秋の行事と食の楽しみ方
季節行事×食イベントが福祉施設を盛り上げる理由
秋は「スポーツの秋」「読書の秋」と言われるように、過ごしやすい気候の中でさまざまな行事が楽しめる季節です。福祉施設でも、敬老会、秋祭り、運動会など行事が盛んに行われます。その中でも毎回盛り上がるのが“食”に関するイベント。季節感を取り入れた食事は、利用者の楽しみのひとつとなります。
ただし、秋の味覚イベントは栗ごはん、さつまいも、きのこなど毎年同じになりがち。そこで今回は「ご当地グルメ」に注目。定番の秋食材にひと工夫を加え、全国各地の味を楽しめる行事食のアイデアをご紹介します。
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福祉現場で広がるご当地グルメの効果
9月のある週、私は複数の福祉施設を訪問する機会がありました。秋は各地で敬老会や秋祭りなどが行われ、装飾や食事も“秋一色”になる季節。今回も、色とりどりの紅葉や栗の飾り、きのこご飯やさつまいもスイーツが並ぶ、定番の秋行事をいくつか見て回りました。
どの施設も丁寧に準備されており、秋らしさはしっかり伝わってきましたが、ふと「毎年同じような印象になっていないか…?」と感じたのも事実です。季節感はあるのに、“記憶に残る特別感”が薄れてしまっているように思えました。
そんな中、とある就労継続支援B型事業所での取り組みに心が動きました。テーマは「ご当地グルメ」。メニューには、東北の郷土料理である「はらこ飯」が登場していました。珍しさもあり、利用者の方々の表情がぱっと明るくなっていたのが印象的でした。
「この味、懐かしいなあ。昔、仙台に住んでたんだよ」
「初めてだけど、これはおいしいね」
と、食事をきっかけに自然と会話が弾み、思い出話も飛び出します。ふだんあまりお話ししない方が、料理に引き寄せられるように声を出す姿もあり、「行事食って、こんなに心を動かすんだな」と実感した瞬間でした。
秋は「感性」が動きやすい季節。いつもの行事に“ひと味違う刺激”を加えることで、食卓が思い出の舞台になるのだと、現場から学ばせてもらいました。

ご当地グルメで秋の食事行事をアップデート
ご当地グルメで行事食をマンネリから脱却する方法
全国には、その土地ならではの秋の味覚や郷土料理がたくさんあります。普段の行事食に地域色を取り入れるだけで、「目新しさ」や「話題性」が生まれ、食を通して会話が広がるきっかけにもなります。
高齢の利用者にとっては懐かしさ、若い職員にとっては新しい発見。そんな“共有できる食体験”が、施設の空気をやさしく和ませてくれます。
行事食だからといって必ずしも凝った調理が必要なわけではなく、簡単なアレンジや盛り付けで十分。栄養価や嚥下の状態に配慮しつつ、無理のない範囲で取り入れていきましょう。
9月におすすめ!ご当地グルメ行事食5選

北海道|秋鮭とじゃがいものちゃんちゃん焼き風
北海道の秋を代表する味覚といえば秋鮭。脂がのった鮭とホクホクのじゃがいもを、甘味噌ベースでしっかりと味付けすれば、ご飯が進む一品になります。鉄板焼き風にホイルで仕上げれば、行事感も演出できて雰囲気アップ。キャベツやにんじんなど野菜もたっぷり入れることで、栄養バランスも整います。味付けの濃さや具材の大きさは利用者にあわせて調整すれば、高齢者施設でも安心して提供できます。
宮城県|はらこ飯
炊き込みご飯の上に鮭の切り身といくらをのせた、宮城の郷土料理「はらこ飯」。見た目も華やかで、敬老の日の行事食としてもぴったりです。秋鮭の出汁を使った炊き込みご飯は、風味豊かで食欲をそそります。いくらは嚥下に配慮し、とろみを加えるなどの工夫で幅広い利用者に対応可能。特別感のある盛り付けで「今日はちょっと特別な日」という演出もできます。食を通して感謝の気持ちを伝える一品です。
石川県|治部煮(じぶに)
石川県の郷土料理である治部煮は、とろみのある出汁が特徴。鶏肉や季節の根菜、すだれ麩などをやさしい味の煮汁でまとめた一品で、身体がじんわり温まります。とろみがあることで飲み込みやすく、咀嚼が難しい方にも配慮しやすいのがポイント。片栗粉で表面をコーティングした肉の食感も柔らかく、口当たりも良好。秋の食事行事としてはもちろん、普段の食事のレパートリーとしても重宝されます。
鹿児島県|やわらか*かるかん蒸し
鹿児島の伝統銘菓「かるかん」は、山芋と米粉で作られたふんわりとした蒸し菓子。ほんのりとした甘さと軽い食感が特徴で、高齢者にも食べやすい和スイーツです。秋の行事食としては、栗あんやさつまいもあんなどの秋らしい素材を中に入れて提供するのがおすすめ。お茶の時間にぴったりで、「おかわり」の声が出るほど好評になることも。職員と一緒に盛り付けや包み紙を工夫することで、視覚からも楽しめるイベントになります。
熊本県|だご汁
熊本の郷土料理「だご汁」は、小麦粉で作った平たい団子(だご)と、にんじん、大根、ごぼうなどの根菜をたっぷり使った具だくさんの汁物。優しい出汁の味わいと、もちっとしただごの食感が、秋の肌寒さをほっと癒してくれる一品です。煮込むことで素材が柔らかくなり、高齢者にも食べやすいのが魅力。栄養価が高く満足感もあり、昼食や夕食のメインとしても活用できます。秋の実りを感じながら、会話も弾む温かい料理です。
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まとめ|“秋を味わう”が会話と笑顔を生む
福祉施設で“記憶に残る行事食”をつくるコツ
秋は食材が豊富な季節でありながら、行事の内容は似通いやすい時期でもあります。そんなときこそ、ご当地グルメを活用して、“味”から秋を楽しむイベントにしてみませんか?
無理なく取り入れられる工夫を通して、利用者と職員の会話が弾み、日常にちょっとした彩りが加わります。今年の秋は、食を通して「その人らしさ」に触れる行事を届けてみてください。