もくじ
はじめに|“見方”が変われば、関係性も変わる
福祉職にこそ求められる“言葉の力”
福祉の仕事では、日々のコミュニケーションが支援の質に直結します。ちょっとした声かけひとつで、相手の安心感が大きく変わる場面も少なくありません。そこで注目したいのが「リフレーミング」という考え方です。
リフレーミングとは、出来事や人の見え方を“別の視点”から捉え直す方法のこと。マイナスに見える出来事も、枠(フレーム)を変えて捉えることで新しい意味や価値が生まれます。心理学やコーチングでも活用されており、福祉現場では支援やチームコミュニケーションに大きな力を発揮します。
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この記事では、福祉従事者が現場で活用しやすい「リフレーミング」の基本から、実際の使い方、現場での言い換え例までを紹介します。

相談支援専門員のフィールドレポート|“リフレーミング”が生んだ、やさしい現場
“見方”ひとつで、支援の力は変わる
相手の価値を決めるのは、その人ではなく“私たちの視点”です。
ある日、就労継続支援A型事業所を訪問した際、「あの人は何度言っても覚えない」「集中力がなくて困る」と、支援員の方が利用者さんの“できない点”を次々と挙げていました。A型は雇用契約があり、成果や生産性が求められる場でもあります。そのため厳しさは必要だと、当初の私は思っていました。
ですが別のA型事業所では、同じような困りごとを抱える利用者さんたちが、それぞれの得意を活かしながら生き生きと作業に取り組んでいたのです。支援員の方に話を聞くと、「うちは、みんなの“できること”を集めて組み合わせてるんです」と笑顔で語ってくれました。
たとえば、手順を覚えるのが苦手でも、繰り返し作業は得意な方にはピッキングを。声かけが得意な方には物品の仕分けや周囲の確認を任せる。「苦手」を起点にするのではなく、「得意」から仕事を組み立てるスタイルです。
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両者の事業所には、“決定的な違い”がありました。それが「リフレーミング」の有無です。
同じ利用者さんでも、「うまく作業できない人」ではなく「得意を活かす場所がまだ見つかっていない人」と捉えるだけで、支援の方向性は変わります。私は両方の事業所の利用者さんを知っていました。だからこそ、「見方が変われば、支援の成果も変わる」という実感が強く残ったのです。
たしかにA型では、効率や成果が重視されます。しかし、だからこそ「どこを伸ばすか」「どう活かすか」の視点が必要なのではないでしょうか。
相談支援専門員として、私たちは事業所と利用者をつなぐ立場にあります。できないことではなく、“できるようになる可能性”に光をあてる言葉を届けること。その積み重ねが、やさしい職場づくりにつながるのだと、改めて感じた出来事でした。

リフレーミングとは?
見え方を“変える”だけで、世界が変わる
リフレーミングは、特定の出来事や人の言動について、新しい視点から意味づけをし直す考え方です。
たとえば、「頑固な人」と感じていた利用者を「信念を持っている人」と見方を変えたとき、対応の仕方や気持ちが変わることがあります。
このように、枠を変えて物事を見直すことで、対人関係のストレスや誤解を減らし、支援の質を高めることができます。

福祉従事者こそ実感する“リフレーミング”の効果
実例から見る「支援の見方」の変化
リフレーミングは福祉現場だけでなく、ビジネスや教育など人と関わるすべての現場で活用できます。特に「対人関係のストレス」「指導や育成がうまくいかない」「メンタルヘルスの低下」などの課題に対して、ポジティブな視点を持つことで、関係の質が大きく変わるのです。
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たとえば、福祉職の現場でよくある以下のような場面でリフレーミングが効果を発揮します。
実例1:すぐに不安がる利用者
【ネガティブな見方】神経質で面倒くさい
【リフレーミング】それだけ職員を信頼し、安心を求めている
実例2:意見をはっきり言う職員
【ネガティブな見方】協調性がない
【リフレーミング】物事を率直に伝えられる貴重な存在
実例3:仕事が遅い新人職員
【ネガティブな見方】要領が悪い
【リフレーミング】丁寧で慎重に仕事を進めようとしている
実例4:感情的な利用者対応
【ネガティブな見方】対応が雑
【リフレーミング】感情に寄り添おうとした熱意の表れ
実例5:マイペースな利用者
【ネガティブな見方】周囲に合わせない
【リフレーミング】自分のペースで安心して行動できている

リフレーミングの言い換え集
現場で“そのまま使える”声かけ例
リフレーミングは言葉がカギになります。以下は、現場ですぐに使える言い換えの例です。
- 「慎重なんだね」→「丁寧で確認を怠らないってすごい」
- 「せっかちだね」→「決断が早くて頼りになる」
- 「わがままに見える」→「自分の意見をはっきり伝えられる」
- 「マイペースすぎる」→「自分のリズムを大切にしている」
- 「頑固だなあ」→「信念を持っているんだね」
- 「不器用だね」→「一生懸命さが伝わってくる」
- 「優柔不断」→「多角的に物事を見ようとしている」
- 「暗い」→「落ち着いていて安心感があるね」
- 「おしゃべり」→「会話を盛り上げるのが上手だね」
- 「怒りっぽい」→「感情をしっかり表現できるのは強みだね」
- 「消極的」→「周囲をよく見て行動しているね」
- 「忘れっぽい」→「新しいことにどんどん挑戦してる証拠だね」
支援力が高い人は利用者さんの言葉をいい感じにリフレーミングして返しますよね。
ナラティブアプローチの視点と組み合わせとても効果的なスキルですね。
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小さな言い換えが職場を変える力に
リフレーミングは「やさしい職場」づくりの第一歩
ネガティブな言葉や評価が飛び交いやすい現場だからこそ、ポジティブな言い換えの力は大きな意味を持ちます。職員同士でリフレーミングの視点を持ち合えば、お互いを認め合える土壌が育ち、結果として支援の質も向上します。
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大切なのは、「良く見せようとすること」ではなく、「その人の価値や強みに目を向けること」。小さな言い換えが、やさしい空気と信頼の輪を広げていきます。
まとめ|“見方”を変えると、関係性も変わる
今日からできる、やさしい一歩を
リフレーミングは、特別なスキルではありません。目の前の人の“見方”を少しだけ変えるだけで、関係性がぐっとやさしくなります。
福祉の現場で日々奮闘する皆さんにこそ、ぜひ活用してほしい考え方です。まずは一つの言葉、一つの視点から始めてみてください。支援にもチームにも前向きな変化が生まれます。

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