人材マネジメント

“福祉型”コミュニケーションでビジネスが変わる!スーパービジョン×1on1ミーティングの可能性

“福祉型”コミュニケーションでビジネスが変わる!スーパービジョン×1on1の可能性

はじめに|人が育つ職場をどうつくる?

なぜ今、人材育成が注目されるのか?

現在、日本全体の労働市場では少子高齢化により深刻な人手不足が続いており、あらゆる業界で「人が足りない」状態が常態化しています。中でも福祉・介護の分野ではその影響が特に顕著で、定着率の向上や人材育成の質がかつてないほど重要になっています。限られた人数で高い支援の質を保ち続けるには、“人が育つ職場づくり”が欠かせません。

対話型育成の鍵となる「スーパービジョン」と「1on1」

そんな中で注目されているのが、スーパービジョンと1on1ミーティングを活用した対話による人材育成の手法です。
この記事では、「福祉型コミュニケーション」の中心とも言えるスーパービジョンの考え方と、それを活かした1on1ミーティングの進め方を、福祉現場とビジネス現場の両方の視点からわかりやすく紹介します。

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スーパービジョンとは?その定義と目的

スーパービジョンの基本的な考え方

スーパービジョン(Supervision)とは、経験豊富な支援者(スーパーバイザー)が、他の支援者(スーパーバイジー)に対して支援の質向上を目的に助言や指導、振り返りの機会を提供する仕組みです。

主な目的は以下の3つです。



スーパービジョンの基本的な考え方
専門性の向上(ケースの検討・技術の習得)
支援者のメンタルサポート(感情の整理・負担軽減)
組織内の支援の質の安定(共通認識の形成)
  1. 専門性の向上(ケースの検討・技術の習得)
  2. 支援者のメンタルサポート(感情の整理・負担軽減)
  3. 組織内の支援の質の安定(共通認識の形成)

「指導」というよりも「対話を通じて成長を促す」ことが特徴で、単なる上下関係とは異なります。

スーパービジョンの3つの機能

スーパービジョンの3つの機能
教育的機能(エデュケーショナル),
支援方法や考え方の学支持的機能(サポーティブ),管理的機能(アドミニストレイティブ)

教育的機能(エデュケーショナル)

支援方法や考え方の学習をサポート。新人育成や知識のブラッシュアップに役立ちます。

具体例:新任職員が初めて対応するケースについて、ベテラン職員と一緒に検討し、アセスメントや支援計画の立て方を学ぶといった場面が代表的です。

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支持的機能(サポーティブ)

感情の整理や精神的な支援を行い、支援者のバーンアウト予防にもつながります。

具体例:支援中に起こった葛藤やストレスをスーパーバイザーに話すことで、安心感を得られ、気持ちの切り替えや再チャレンジの動機づけになります。

管理的機能(アドミニストレイティブ)

組織やチーム内でのルール共有、支援の方向性確認など、業務の整合性を取る役割を果たします。

具体例:「このケースでは訪問頻度を週2回に変更しよう」といった判断を、組織内の方針に基づいて確認・共有するなどのシーンで活用されます。

現場でのスーパービジョンの活用シーン

事例検討(ケーススタディ)

利用者支援における悩みや課題をチームで共有し、スーパーバイザーからの視点でフィードバックをもらうことで新たな視点や対応策を得られます。

フィードバックが一方的にならず、対話形式で進めることが重要です。また、検討対象者の人格否定にならないような配慮が求められます。

定期的な1on1ミーティング

直属の上司との定期的な振り返りや目標確認もスーパービジョンの一形態です。日常の業務に取り入れやすい形で実践できます。

単なる業務報告の場に終始しないよう、感情面や今後の目標も丁寧に扱う工夫が必要です。

チーム全体の価値観共有

スーパービジョンを通して「うちの支援方針はこうだよね」と共通の価値観を再確認し、支援のブレを防ぎます。

価値観の押しつけにならないよう、メンバー同士の対話と合意形成を重視しましょう。

スーパービジョンと1on1ミーティングは実は相性抜群!

信頼関係がカギになる1on1の魅力

スーパービジョンの持つ「教える」「支える」という機能は、今注目されている1on1ミーティングととても相性がいいのです。
例えば、定期的な1on1では日頃の業務や支援の悩みを率直に共有できるため、スーパービジョン的な効果が自然と得られます。特に、信頼関係が築かれている上司との対話では「安心して話せる」「否定されない」という環境が支援者の成長を後押しします。
また、上司側にとっても、部下の悩みや考えを把握しながら、支援の方針を共有できる貴重な機会になります。

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形式にとらわれない日常的な実践へ

ポイントは、形式にとらわれすぎずリラックスした雰囲気で行うこと。気負わずに話せる1on1こそ、スーパービジョンを日常的に実践するための最良の入り口になります。

支援文化を育てるきっかけにもなる

スーパービジョンの支持的・教育的機能は、1on1ミーティングと非常に高い親和性を持ちます。
1on1の場で「日々の悩み」「ケースの共有」「今後の目標」などを上司と共有することで、自然とスーパービジョン的な効果が得られるのです。形式ばらずに話しやすい雰囲気を作ることで、相談文化が職場に定着しやすくなり、支援の質や職員の定着にもつながります。

スーパービジョンがある職場とない職場の違い

継続的なスーパービジョンが生む好循環

スーパービジョンが継続的に実施されている職場では、以下のような効果が期待できます:

  • 職員の離職率の低下
  • チーム内の連携強化
  • 利用者満足度の向上
  • 自己肯定感や専門性の向上

支援者同士の対話が定着し、相談しやすい雰囲気や相互理解が深まることで、職員の安心感とやりがいが増し、職場の風通しも良くなります。これは結果的に、支援の質や組織全体の成長にも直結します。

スーパービジョンがない職場のリスク

一方で、スーパービジョンが機能していない職場では、以下のような問題が起こりやすくなります:

  • 支援の質が属人的になる
  • 初任者が孤立しやすい
  • 問題を抱え込みやすくなる
  • 相談や改善提案がしにくい雰囲気になる

こうした状況では、職員の精神的負担が増し、モチベーションやパフォーマンスが低下しやすくなります。人材が定着せず、チーム全体の生産性や支援の一貫性にも影響が及びかねません。

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まとめ|スーパービジョンは支援の“質”を育てる土台

対話とふりかえりが、組織を育てる原動力になる

スーパービジョンは、ただの「指導」ではなく、支援者同士が学び合い、支え合う文化を育てるものです。新人育成からベテラン職員のリフレッシュまで、幅広い層にメリットがある仕組みです。
1on1ミーティングの場面でも活用できる視点を意識することで、職場全体の対話の質が高まり、風通しの良い環境づくりにもつながります。

シンパ、現場直送!福祉HACK
シンパ(@sinpa_fukushi)

この記事を書いた人

福祉の世界に飛び込んだのは、まったくの未経験から。それでも気づけば15年以上──就労継続支援B型・A型、就労移行支援を渡り歩き、職業指導員・生活支援員・管理者・サービス管理責任者を経て、いまは社会福祉法人で相談支援専門員として働いています。途中で社会福祉士資格も取得しました。

多様な立場で現場を見てきたぶん、「働きづらさ」や「支援の悩み」のリアルに共感できます。だからこそ、このブログでは “支援の質を高めながら、仕事をラクにおもしろくするヒント” をお届け中。ICTツールやちょっとした工夫で、明日の現場が少しでも軽くなる──そんなアイデアを発信しています。

趣味は若手お笑い芸人の追っかけ。無名の芸人さんが化けていく瞬間にワクワクするんです。福祉の現場にも、同じように輝く“原石”がたくさんいるはず。そんな人たちが自分らしく光る職場づくりを、一緒に考えていけたらうれしいです。

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